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燕京歳時記 十月 「走馬灯」


走馬灯は、紙を切って輪にして、蝋燭の熱でこれを動かすと、描かれた馬や車は、ぐるぐると休まず駆け巡る。蝋燭が消えるとそれは止まってしまう。これはたいしたものではないのだが、成敗興衰の道理にとてもかなっている。古来二十四史の中に書かれていることも、走馬灯の如しといえよう。

走馬灯以外には、車灯、羊灯、獅子灯、刺繍球灯、といったものがある。毎年十月には前門、後門、東四牌楼、西四牌楼などの場所でそれらを見かける。子供をつれてゆき、喜び勇んでそれを買い求めるのも、楽しみの一つだ。

走馬灯の作られ方は、火力で輪を回すもので、現在の汽船や汽車の理屈である。これを推し進め、精密にしたら、数百年の間に、精密な機械ができたのである。惜しむべきことはわが国では精密な機械を作ることを戒めていたので、このようなものを作る者は子供の戯れ事と同一視されていた。今日、人と同じ事をして、神にばかり頼り、おろかにすごしていたなら、世の中の才能はかの地に多く、わが国に少ないということになってしまう。自らたたないからだ。


訳注:

二十四史: 史記に始まる中国の正史。清史稿を合わせて、二十五史ともいいます。この時代は清の時代なので明史までなので二十四史です。


2001/10/04
改稿2010/10/28

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