2003年12月22日 No,28
 
 いよいよ帰国も秒読み。今週は部屋の掃除を本格的に行いやっと実感も沸いてきました。今までは引越しの前の日に徹夜で荷物の整理を行うのが当たり前だった自分にしてみれば、今回は驚異的な早さで準備を進めています。海外からの引越しですからさすがに今までのようにのんびりもしていられません。

 さて帰国の際の苦労を考え、なるべく荷物が増えないように注意してきたこの2年間でしたが、いざ荷造りをしてみると結構いろんなものが出てくるものです。雲南省の観光地で相場の5倍の値段で買わされた掛け軸、勢いで友人からもらってしまった中華人民共和国南方少数民族仕様アンティークベビーチェア、海賊版と知りながら夜の寂しさに耐えられず買いまくった200枚以上のDVDなどなど、なぜにこんなものを買ってしまったのかわからないものも沢山ありますが、いざ捨てるとなると名残惜しく、結局日本に送り返す段ボールの中に詰めてしまっています。

 そしてこの荷物、北京や上海のように宅急便が整備されていないこの街では全て郵便局から送らなくてはいけません。これが非常に厄介。この国では一部の例外を除いて、荷物を送る際に郵便局員の目で荷物の中身を全て確認するのです。送ってはいけない物が入っていないかどうか検査するために。例えば液体、DVD類、干物(?)など。大都市では郵便局員も忙しいのでそんなに細かくチェックされないらしいのですが、こんな田舎の郵便局になるとしみ付きパンツ1枚までご丁寧にお調べになります。昨日なんか写真ケースまで開けて調べてくれました。以前からフルシチョフ時代のソ連を思わせる彼らの接客態度に頭に来ていた自分が抗議しても、「これは中国の規則だから」と一蹴、「ちきしょー・・・」。

 何はともあれ荷物も送り始めたし帰国準備は着々と進行中です。それにしてもバレないように荷物に入れたお酒の瓶を目ざとく見つけて突き返したくせに、同じ液体物の四川特産唐辛子醤を「故意的に」見つけなかった攀枝花市中央郵便局小包担当主任の陳さん、やはりあなたも自分の故郷の特産が海外に出て行くのはうれしいのですか。そんなあなたの郷土愛に乾杯。通信28号よろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

 帰国を前にして、いやでも「別れ」を意識する毎日。2年間通った床屋さん、日本人嫌いを全く隠そうとしなかった野菜売りのオヤジ、毎回2角分(日本円で約4円)おまけしてくれたラーメン屋のおばちゃん。もう帰国まで会いそうにない人には今週くらいから帰国する旨を伝えてきました。

 しかし何といっても2年間苦楽をともにした選手たちとの別れは辛いものがありました。とは言っても今直接指導している選手たちとはまだあと10日間ほど練習があるのですが、今週、去年まで指導していた上の学年の選手たちの何人かが自分に最後の挨拶に来てくれました。この子達はその多くが高校に進学したのですが、やはり中にはドロップアウトしてしまい野球からの勉強からも離れてしまった子たちもいます。今回自分を訪ねてきてくれたのはそんな彼ら。

 「本当は会わせる顔がないんだけど・・・。」と苦笑いしながら自分の家に入ってきた子たち。そのメンバーのリーダー格、除太鋭(シュータイルイ)はチーム内でも自分と他のメンバーの橋渡し役として常に自分を助けてくれた選手。彼は去年、卒業を間近に控えた時期に数人の選手たちとともに学校を辞め、現在はアルバイトをしながら自動車免許の教習所に通う毎日です。彼らが「会わせる顔がない」と言った背景には、自分の再三の制止を振り切って自ら学校を辞めたこと、その後故意的に自分と会うのを避けてきたことなどへの自責の念があると思うのですが、最後にわざわざ会いに来てくれたことは自分にとっても非常にうれしいことでした。

 彼らを直接指導していた頃は自分も中国に来たばかりで、中国語も日常会話さえままならない状況でした。少なくとも現在のレベル程度言葉が話せれば、もっと良い練習をして、試合でももっといい結果が残せたのではないかという思いは拭いきれません。あまりにもだらけた彼らの練習態度に頭にきて自分が途中で帰ってしまったこともありましたし、状況もよく理解せずに選手を怒鳴ってしまうこともありました。そんなときに時には電話で、時にはわざわざ家まで尋ねてきてチーム内の関係を修復しようとしていたのが除太鋭でした。

 「焦りは禁物だよ。」現状を理解せずに目の前の大会のことばかりを心配していた当時の自分には、今考えれば実際に滑稽なほどの焦りがあったような気がします。そんな時、遠慮がちに彼は指摘してくれました。しかも彼はチーム内では3番手のピッチャーという試合に出る確率がかなり低い立場であったのにです。

 しかしそれだけ真剣に野球に打ち込んでいた分、野球が終わった後の虚脱感、そして彼らの進路に対してあまりにも無責任なコーチ、学校の先生に「裏切られた」という思いがあったのかもしれません。(ここでは詳しくは述べませんが、確かに体育局、学校側の彼らの進路に対する対応はひどいものがありました。)そして彼はそれらに完全に背を向けることを選びました。 

 「今の中国では金を持つものが権力を持つんだよ。」学校を辞めたことを後悔しているかという自分の質問に彼はこう答えました。彼の考え方に甘さ、必要以上の悲観があることは否定しません。しかし17歳の少年にこう思わせてしまう周りの大人にも問題があるはずです。今彼は自分なりに、その年齢なりに現状を理解、納得して前向きに頑張っています。外から見える「発展し続ける中国」とは対照的に社会内の歪、格差が大きくなる一方の中国で腐らずに前向きに進んでいくことは非常にエネルギーが要ることかもしれませんが、彼なら大丈夫、ピッチング内容が悪くて自分に罰走を課せられたとき泣きながら走り続けていた彼の姿を思い出しそう確信しています。家から出て行く時に無言で握手を求めてきた彼。さすがに二年間もいれば少しはいいことあるものです。実感、われ帰国の日近し。


SPECIAL THANKS !!

 年間を通して色々な方々から物心両面にわたりご支援をいただいた幸せ者の自分であります。今まで通信上で書かせていただいた以外にも数多くの皆様から助けられ、勇気付けられ、時に厳しく叱咤していただきました。自分の活動が皆さんのご期待にそえるものであったかはまだわかりませんが、日々精一杯活動に打ち込んできたとは自負しています。改めまして御礼申し上げます。そして今回は自分の活動に対し、日本円で10万円のご寄付を頂いた北海道の新栄砕石工業(株)のみなさまにお礼とお詫び申し上げます。「お詫び」といいますのもご寄付は昨年度中に頂いたものだったのですが、通信上に掲載するのがこんなに遅くなってしまいました。10万円といいますとやはり大金ですし、自分自身、選手たちに最も有効に還元できる使い道を考えていたのですが、今回ベースセット(5万円相当)、選手のグラブの修理用のひもを購入するためにこのお金を使わせていただきました。日本からの輸入のため、まだ手元には届いておらず、写真を掲載することは出来ないのですが、ここで改めてお礼申し上げます。残ったお金につきましては次回大会参加時の遠征費とさせていただきます。本当にありがとうございました。。


 週末キッズのみんなとは少し早めのお別れ。自分がこの街を離れる頃に彼らの小学校がちょうど期末テストの時期にあたるため、もう会えなくなってしまう可能性があるということで先週末、お別れ会を催してくれました。選手ひとりひとりが自分のためにプレゼントを用意してくれ、写真のようなスキンシップでお別れを表現してくれました。

 自分にとっても中高生の指導だけでなく、この子達と交流ができたのは非常に大きかったし、本当に楽しかった。環境があればどこの国の子どもたちもこのスポーツを好きになってくれることがわかりましたし。ちなみに写真の中で自分の腕の中にいる子はまだ4歳。この状況を理解しているのかはかなり微妙でしたが、最後は自分で書いた手紙を渡してくれました。 「梅森コーチ、今までどうもありがとう。中国人の奥さんを探してください。」

 おいおいお前がそんなこと言うなよ。しかも思いっきり名前間違ってるぜ。これからも頑張れ週末キッズのみんな!! 


終わりに 

 帰国までまさに秒読みになってきました。二年前、中国に赴任した時に思い描いた理想と現実では大きな隔たりがある感は否めませんが、それなりに毎日頑張ってきたのである程度は満足できる活動ではなかったかと思います。通信の方も次回を最終号として活動を締めくくりたいと思います。そして全く野球に関係ないから書かないほうがいいのでしょうけど、ショックでした、広末涼子の結婚!!中山美穂を失った今、心の支えは広末しかいなかったのに・・・。申し訳ありません、全く関係ありませんでした。次回最終号もよろしくお願いします。

 

お願い

このメールに関してご意見ご感想をどしどしおよせいただければ幸いです。同時に現在我がチームではチームのPR活動に非常に力を入れております。ご迷惑でなければこの記事をお知り合い、ご友人にどんどん転送していただければと思います。重ねてよろしくお願いいたします。

ご意見、ご感想は 煤孫(すすまご)くんまで

 

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