2003年11月25日 No,26
 
 自分の任期も実質あと1ヵ月。二年間1度も帰国していなかったわけですから、日本に着いたらどれだけ感動するのか今から楽しみです。自分は青年海外協力隊員として中国に来たわけですが、協力隊の場合、参加にあたり3ヶ月間の日本国内での研修がありました。完全な合宿生活で世界各地に赴任する人たちと、まさに寝食をともにしたわけですが、中国のようにある程度生活環境が整った国は稀で、ネットに接続できないのはもちろん、電気や水道もないところに赴任する人もたくさんいました。日本を出る時にはお互いに励ましあいながら任地に飛んだわけですが、そんな彼らも任地での生活を終えようとしています。マイナス40度のモンゴルの草原で、灼熱のサハラ砂漠で、サソリが這うベトナムの山奥で、またイラクの戦火におびえる中東でみなさん2年間ご苦労様でした。帰国後みなさんの思い出話を聞けることを楽しみにしています。自分も中国の公衆トイレがいかにエキサイティングかを存分にお話したいと思います。

 通信26号よろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

  自分の中国での任期もあとわずかとなり、曲がりなりにも選手たちもいろいろな面で成長してきたなと感じていた昨今。少しずつではありますが大人になりつつあるのかと感心していたわけですが、そんな薄っぺらな安心感も吹っ飛ぶ出来事が起こってしまいました。

 事の起こりは先週の金曜日。その日、練習に来なかった子がひとりおり、他の選手に確認したところ「寄宿舎のベッドから落ちて顔をぶつけた」とのこと。その後、担任の先生にも確認したところ事実のようで、その日は普通どおりに練習しました。しかし次の日、野球部の選手たちが校門でケンカしているとの連絡が入りました。結局殴り合いにはならなかったようですが、他のクラスの生徒と選手たちがもめたことは事実らしく、その後事実関係を調べてみると意外なことがわかってきました。

 まず、ベッドから落ちたと言って練習に来なかった選手は、実は他のクラスの子に殴られていたということ。そして選手たちはそれを先生にもコーチにも隠していました。なぜなら仕返しをするために!次の日選手たちは、殴った子が校門から出てくるのを待ち伏せし、そこを学校の先生が見つけ、事が発覚したわけです。

 選手たちとは言っても、実際に待ち伏せしていたのはチームが誇る武闘派3人衆とその取り巻きで、合計8人でした。彼らの言い分は「先生やコーチに報告すると口頭で奴に注意するだけだから」、自分たちが殴られた選手の代わりに仕返しすることにしたのだそうです。しかし中心になった3人組は以前から何度もこのようなケンカ騒ぎを起こし、学校からは次回何かあったら自主退学するという誓約書まで書かされている選手たちなのです。今回は手が出なかったということで厳重注意だけでしたが、もしケンカになっていたら間違いなく、退学→野球部追放という流れになっていたでしょう。

 彼らの行動の成否は別にして、自分の一番の疑問は、なぜそんなリーチがかかった状態でケンカをしようとしたかということ。もし見つかっていたら間違いなく野球が出来なくなるわけですから、そのリスクたるや相当なものです。しかも3人とも野球の技術は素晴らしいものがあり、かつ野球が大好きな子たちなのです。今日の練習で自分は彼らにその辺りを問いただしました。そしてルールの中で生活するということの重要性、必要性を話しましたが、自分は彼らが今後また同じような問題を起こすだろうと感じています。

子どもがそんなに簡単に行動が改善できたら、日本中の生徒指導担当の先生の仕事がなくなってしまいます。またコーチの立場としてこんなことを思うのは不謹慎かもしれませんが、スポーツをやる子だったらそれくらい元気があるほうがいいのではないかとも感じています。顔を真っ赤にして怒る中国人コーチの横でそんなことを考えていた自分でした。

 そして2時間にわたるお説教中、一度だけ3人が顔をあげて驚いた瞬間がありました。自分が彼らに練習停止2ヶ月間を伝えた時です。うちのチームでは問題を起こした選手は一定期間練習に参加させず、グランド整備や道具運びだけをさせることにしているのですが、2ヶ月間練習ができないということは自分とはもう一緒に練習できなくなったわけです。以前に3ヶ月間の練習停止を食らったことがある3人も、まさか今回のことでという表情でした。こんなことを自分で書くのも気が引けますが、この3人は自分がもうすぐ帰国することを一番残念に思ってくれていた選手たちで、「俺たち選手の親が給料出すから中国に残ってくれない」と自分に伝えてきた矢先の処分だっただけにショックだったはずです。ただ自分としては今後の彼らのためにも、今回は厳しく対応しようと思っています。

 それにしてもなぜに学校の校門で待ち伏せしてしまったのか。もっと他の場所で待っていれば先生にも見つからなかったのに(笑)。いかんいかん、教育に携わるものらしからぬ発言でした。


C ビレッジ ?

 何事も急に決まるのが中国。お偉方の思いつきひとつで事が急転直下するのも中国。その分、いろいろな人の悲喜こもごもあるわけですが、先週攀枝花市体育局にとってはまさに突然の「喜」がやってきました。なんと国家体育局の決定でこの街に野球、ソフトボールの国家訓練基地が建設されることになったのです。これは国がお金を出してナショナルチームやプロチームの合宿に使う総合トレーニング施設を造ってしまおうということです。日本では総合トレーニング施設としてサッカー協会が福島県に建設した「Jビレッジ」が有名ですが、その野球版です。

 なぜここが選ばれたかというと、1年を通じて温暖な気候で冬にキャンプをできること、野球ソフトボールを受け入れる土壌が出来上がっていること、飛行場が開港すること(12月10日)などがあるようですが細かいことはわかりません。とにかくどっかで誰かが決めたのでしょう。そしてこれも突然ですが、来月には現存の施設を使ってソフトボールのナショナルチームの合宿、年明けには16歳以下のソフトボールの全国大会の実施が決定しました。すごいぞ中国!まさに急転直下。これによってうちのチーム、体育局が受ける恩恵はかなりのものです。これで野球ソフトボールを取り巻く環境が一気に改善されることは間違いありません。ただ決まったことが急にご破算になるのも中国・・・。まだまだ気は抜けません。


 最近やたらと新入部員が増えた週末キッズ軍団。だから自分に話しかけてから日本人だと知ってびっくりする子もたくさんいます。そして日本人を見て中国の子どもがまず発してしまう単語、そう「日本鬼子!!」。この単語は、たぶん中国で生活する日本人の方なら誰もが一度は言われたことがあるはずの日本人への蔑称です。今でも小学生の使う辞書の例文や社会化の教科書でも頻繁に出てくる単語なので、週末キッズのルーキーたちも深く考えずに自分に向かって言ってしまうことが多いようです。

そして自分はもし彼らにこう呼ばれたらどうするか、まずつねる、しかも泣くまで。これは彼らへの洗礼のようなものになっているのですが、この先、選手とコーチという立場で付き合っていくので、これだけは真剣な表情で二度と言わないようにまず指導します。ただ先週泣かせた子どもは自分がうしろを向いた隙に、自分の股間を思いっきり蹴ってきました(写真参照)。彼との決着は今週に持ち越しです。

終わりに 

 そろそろ日本へ送り返す荷物の整理でも始ようと思い始めた今日この頃。そうは思ってもなかなか実行するには至らず、結局普段と同じ毎日を送っております。経験者からは早めの帰国準備を勧められているのですが、この調子で行くと帰国前日に大慌てでパッキングするハメになりそうです。そして帰国を前にして日本に着いたら何を最初にしたいか。それはパチンコ。最近毎日夢にあの電子音が響いています。

 

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