2003年10月20日 No,23
 
 日本のメディアでどの程度取り上げられたかは知りませんが、先日上方漫才の大御所「夢路いとし喜味こいし」のいとし師匠がお亡くなりになりました。なんだいきなりとお思いの方も多いと思いますが、自分はこのお二人の漫才が大好きでした。若い人はご存じない人が多いかもしれませんが、彼らの漫才はどの年代の人が見ても面白いと感じる非常に希少な存在であったと思います。コンビを組んで60年、実の兄弟でもあったお二人の漫才がもうみられないと思うと、日本に帰国する楽しみがひとつ減ってしまった感さえあります。多分通信を読んでいただいている方の80%には全く訳のわからない話だと思いますが、掛布の現役引退の10倍落ちこんだ自分には書かずにはいられないニュースでした。それにしても室田日出男、名古屋章に続きまた日本は貴重な文化人を失ってしまいました。これでもし、いかりや長介に何かあったらきっと自分は立ち直ることができないでしょう。長さんがずっと元気でいてくれることを祈りながら通信23号今回もよろしくお願いします。

BASEBALL in Panzhihua上海レポートNo.1

さて前回も書いたように今月初旬(2日から6日)まで上海で全国大会があり、攀枝花市青少年野球チームも参加してきました。笑いあり涙ありの10日間、それにしても疲れました・・・・。

 今回参加したのは2003年全国青少年AA(=16歳以下)棒球大会。全国各地から10チームが参加して行われました。参加チームは以下のとおりで5チームずつ2グループに分かれてリーグ戦を行い、その後順位決定戦を行うという流れでした。

Aグループ 上海、広州、山東、杭州、鄭州
Bグループ 北京、深せん、河南新郷、無錫、攀枝花

 結果から言うと我らが攀枝花チームはブービー賞9位。完全に力負けでした。予選リーグの4試合のうちでまともに試合になったのはわずか1試合。その他は相手チームに申し訳なくなるほどひどい出来でした。ピッチャーはストライクが投げられない、内野手はゴロが捕れない、万が一捕っても一塁まで大暴投、打つほうでも相手ピッチャーのボールがキャッチャーミットに入ってからやっとバットを振りはじめるような始末で映画「頑張れベアーズ」に匹敵する低レベルぶりでした。

 まあ考えられる要因としては、うちの選手たちにとって今回が初めて参加する大会だったこと、大会開催の通知が届くのが遅かったのでピッチャーはじめ準備期間が極端に少なかったことなどいくらでも挙げることが出来ますが結局は実力がなかったと考えるのが妥当なのでしょう。そして今回一番感じたことはうちの選手たちが「負ける」ということに関して非常に鈍感であるということ。自分などはここまでコテンパンにやられたら今後立ち直れないのではないかと心配してベンチで見ていたのですが、うちの選手たちは試合に負けても普段と全く変わらず、帰りのバスの窓からきれいなお嬢さんを発見し歓声を上げ、宿舎ではトランプに熱中する有様。そしてこれにはさすがに頭に来ました。

 「お前らここまでやられて悔しくないのか!」夜のミーティングで自分にこう言われ、さすがに何人かの選手たちは自分たちの状況に気がついたようです。このチームは前のチーム(去年自分が受け持ったチーム)がこの街始まって以来の実力だったということもあって、普段の練習や試合の参加機会が限られていたという同情すべき点もあるのですが、それにしてもひどすぎました。精神論ばかり言っても何も始まりませんがそれにしてもメンタル的に弱い子が多いのも事実です。実際そのミーティングの後も日本人コーチの怒りなどどこ吹く風という感じの子もたくさんいました。ただ今回の収穫はこのチームの状況を深刻にとらえこれから頑張ろうと前向きになった子が、必ずしも自分が予想していた子とは一致しなかったこと。つい数ヶ月前に野球を始めた選手の中にもそういった選手がたくさんいたことが自分の気持ちを少し楽にしてくれました。

 中国人コーチたちの予想とは逆に自分はこのチームは大化けする可能性を秘めていると感じています。今回の試合を通して課題もはっきりしてきたので自分も残りの時間の中でメンタル面を含めて、彼らの成長の手助けを出来ればと思っています。(試合のスコア等は次回の通信でご紹介します。)


中国大陸横断

 毎回のことなのですが四川の山奥のこの街から全国大会に参加するには恐ろしいほどの時間を移動に費やなくてはいけません。今回は上海までバス、列車での移動。片道は約68時間、退屈と悪臭との戦いでした。最初の雲南省の昆明市まで300キロのバス移動では途中山の中でバスが動かなくなったり、車酔いでもどす選手も出たりとのっけからハプニング続き。そして昆明から上海の移動は列車で約50時間、今回は寝台車での移動とはいえさすがにきついものがありました。

しかしこういう機会に選手たちをじっくり観察してみると、性格によって時間の過ごし方も違うもので、寝ている時以外はずっとものを食べ続けている子、若い女性の乗客を見つけ話しかけにいく子もいれば、三時間毎に自分の靴下の匂いを確認する不可解な子もいました。

 そして「悪臭」についても述べなくてはいけません。容易にご想像できるとは思いますが、3日も4日もシャワーを浴びていなければ、それぞれの衣服からスプレンディットな匂いが発生してきます。そしてこの子達の面白いところはもしも異臭を感じたら、必ずその発生源を突き止めにかかること。でも結局上海につくころには「みんなが臭いんだと」いうことで意見がまとまったようです。

 それにしても、ひとりで50時間列車の乗れと言われれば中山美穂にお願いされても少し考えてしまうところですが選手たちと一緒ならなかなか楽しいものでした。ただ自分の上のベッドの子が寝言でやたらと「ママ、ママ」とつぶやくのには参りましたが・・・・。


終わりに 

 さて今回は上海の試合レポートの第一弾。ここまで通信の発行が遅くなってしまったのは自分の怒りを抑えるのに時間がかかってしまったからです(笑)。本文中にも書きましたが去年のチームとのあまりのギャップの大きさに他のチームのコーチさんからも驚いていました。そしてこの街に帰ってきてからも体育局関係者からはきつく、そして全くもっともなおしかり、ご意見を受けております。他の中国の街だったらみんな野球を知らないからこんなこともないと思うのですが、ここでは野球経験者がたくさんいるので非常に肩身の狭い日々を送っております。まあ自分も悲観することなく前向きにやっていきたいと思います。ちなみに戻ってきてからの選手たちの練習はもの凄くつらいものになっています。練習中泣き出す選手が続出中です。頑張れガキンチョ軍団!!

 

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