2003年8月8日 No,20
 
1週間後に北京への出張を控えて心もそぞろな今日この頃。一連のSARS騒動のおかげでこの何ヶ月かはこの街から一歩も出られない生活を送っていたわけで、興奮する気持ちは隠せません。それにしても普段から四川の田舎から北京に行くことはまさにビッグイベント。一度でも北京に行かれたことのある人ならお分かりかと思いますが今の北京は本当に大都会。自転車の数は多いですが高層ビルの立ち並ぶ風景はまさに世界の大都市。自分も赴任する際初めて北京を訪れた際は本当にびっくりしました。

 そして北京で絶対決行しなくてはいけない行事は「買い出し」、しかも食べ物。パスタ、コーヒー、ベーコン、日本の醤油にマヨネーズ、紅しょうがと焼肉のたれ。そしてこれらを買い込んだ後は郵便で先に攀枝花に送り返し、帰ってくると同時に素敵な西洋風(?)ランチを楽しむわけです。これらの食料はここでは絶対に買うことができないもの。でもそれはどうしてか?理由は簡単、この街でそんなものを売っても誰も食べないから。決して発展が遅れているからという理由ではないと感じます。四川は「食べ物ナショナリズム」が中国の他のどの地域よりも強い。四川の料理が世界一だと思っている人が非常に多い。だから若いお姉ちゃんたちでも四川料理が大好き。日本のように新しいもの、欧米のものに何でも飛びつく様子とはかなり違います。まあきっと日本が異常なのでしょう。でもさすがにハンバーガーに唐辛子油かけて食べるのはやめようよみんな・・・。通信20号よろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

昆明は雲南省の省都。そしてこの町から一番近い大都市(列車で4時間)。ここは外国人観光客も多くなかなか洗練された街です。先月この街に中国全土の注目が集まりました。そう、ここでスペインのサッカーチームのレアルマドリッドの合宿が行われたのです。ベッカム、ジダンなど世界のスーパースターが所属するこのチームのすごさは今さら書く必要もないと思いますが、彼らが来たことでの中国人の興奮はもの凄いものがありました。しばらく日本にいないので日本での「ベッカム騒動」はどの程度のなのかはわかりませんが、中国人の完全に我を見失った様子もかなりのもの。テレビでは毎日特番、練習観戦のチケットは世紀の値段の何十倍で売買され、テレビの記者までベッカムと握手して泣き出してしまう始末。もう「狂っている」のひと言につきます。スペイン人の眼にはこの中国や日本の現象はどう映っているのでしょうか。全然野球に関係ない話ですが、なにかアジア人として恥ずかしい気持ちになったのは自分だけでしょうか。

 さてそんな隣町の喧騒をよそにうちの選手たちは毎日元気に練習しています。でもいかんせん暑すぎる。今年は世界中で極暑になっているところが多いようですが中国も例外ではなく、ある地方では飲料水の不足が深刻化してきているところもあるようです。そしてこんなに暑いとどうなるか、まず中国人コーチのやる気が目に見えて低下していきます。

 これにはさすがに参りました。これは国民性なのかもしれませんが、暑さが厳しい日は顔をみた段階でもうわかってしまいます。「おい、今日の練習早めに上がろうぜ」と訴える気持ちが・・・。日本のように炎天下の中で何時間も練習しろとは言いませんが、もっと集中して練習してもいいと思うのですがなかなかそうも行きません。

 そして選手たちはといえばやる気の見られないコーチたちを横目に元気ハツラツ。ただ自分は最近の練習を見て再確認しました。この子たちは本当に野球が好きなんだなということを。中国での野球は何度も書いているようにマイナースポーツ。だから日本でいえばクリケットやセパタクロー(クリケット、セパタクロー愛好家の皆さんごめんなさい)なんかをやっているのと同じ感じかもしれません。それだけ認知度が低いのに彼らは本当に楽しそうに練習をしています。自分の彼らに対する要求も文化の違う彼らにとっては受け入れ難いものもたくさんあるはずです。それなのに自分の話も真剣に聞いてくれるし、自分の要求にも一生懸命こたえようとしてくれます。ましてや日本と違って野球をやっていて黄色い声援を受けることもなければ、学校のヒーローになることもありません。遊ぶ時間を全て投げうって取り組むにはあまりにも厳しい環境です。そんな中で損得勘定抜きにこのスポーツを好きになってくれた子どもたちに感謝したい気持ちでいっぱいです。

8月に入り全体の練習は休みになりましたが何人もの選手たちが自分に電話をかけてきて、野球がしたいと言ってくれます。そんな彼らと一緒に今日も練習して来ました。最近中国人のおとなとの人間関係にいささか憔悴気味だった自分には彼らの野球に取り組む姿は何よりの活力源になっています。あと4ヶ月の活動期間、彼らと一緒に頑張ってやっていこうと思います。 

 


めいすんず Babes!

今回は曹鋭(ツァオルイ 左)劉力遠(リュウリーユエン)のふたり。

まず曹鋭には本当にお世話してやりました(笑)彼は野球が好きで、技術もあるのに、突然頭が飛んじゃうときがあります。練習サボって遊びに行ったり、授業中にいきなり取っ組み合いのけんかをしたりと。体はでかいくせに頭の方はまだまだ改善する余地ありです。劉力遠は今チーム内で一番安定しているピッチャー。ただ彼には深刻な問題がひとつ。それはとにかく理屈っぽいこと。技術的な指導をしてもなかなか簡単には納得しません。多分彼のくせは学校でも先生を悩ませているはず。数学の公式なんかも素直に暗記できないタイプです。自分はひそかに彼のことを「小政治家」と呼んでいます。

ただふたりとも野球が本当に大好きです。今後のチームの核になりえる子達です。


周さんのひとり言

この街では市民参加型の市運動大会が開催されています。卓球、サッカー、ボーリングなど職場対抗の形でかなり盛大に行われています。そして我らが周さんはこの大会責任者的立場で毎日奮闘しています。当然忙しい毎日が続きストレスも溜まり気味。

「あー、お前がうらやましいわ!!」

これが周さんが自分に向かって最近よく言うひと言。最近全体練習が休みになり、少し暇になった自分に精一杯のイヤミを込めて当り散らしてくれます。でもそんな忙しい時期もあと2週間、頑張れ周さん。


終わりに 

日本では夏の甲子園が始まりました。この街に住むアメリカ人も以前日本に行った際にちょうど甲子園が行われていたそうで、日本人の高校野球好きには驚いたようです。

「たかが高校生のスポーツイベントに国中が熱くなるなんて・・・」

とは彼の言葉。確かに他の国にはちょっと見られない習慣かもしれませんね。それにしても甲子園の主役を坊主頭たちに奪われるこの時期は阪神タイガースにとっては一番の試練のとき。けが人も出ているようですが歓喜の瞬間は近づいています。いやーホントに楽しみだ。

 

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