2003年7月14日 No,19
 
世界一のスポーツ大国といえばやはりアメリカ合衆国。伝統的に盛んな4大スポーツや陸上、テニス、水泳など加えて最近ではサッカー、ラグビーなど旧大陸諸国の専売特許だった種目でも世界を席捲しつつあります。でもあの経済力、多様な人種、恵まれた環境、国民性など総合的に考えればアメリカでスポーツが盛んなのは当然かもしれません。一方で自分が子どもの頃からずっと不思議だったのはスウェーデンという国のスポーツ。この国は人口わずか900万弱、GNP2200億ドルは実にアメリカの32分の1。しかしこの国、W杯準優勝の経験を持つサッカー、今やカナダ、ロシアをもしのぐようになったアイスホッケー、ボルグ、エドバーグを生んだテニス、そしてスキーにハンドボールに卓球、ゴルフ。ざっとあげただけでもこれだけの種目で世界トップクラス。体格的なアドバンテージがあるにしてもこれは驚くべきこと。何が決定的な理由なのかはわかりませんがこの北欧の小国の現状は日本を含めこれからスポーツで世界に打って出ようという国には大いに参考にすべきだと思います。そして中国、人口はスウェーデンの13倍、国土面積20倍、GNPだって5倍。これだけの環境がそろっていてスポーツが盛んにならない方がおかしい。中国生活一年半、中国スポーツ界の根底にある問題があらゆる局面で見えるようになってきた今日この頃、もどかしさばかりを感じるわたくしなのでした。人民の皆さん、麻雀とトランプにかける情熱の半分でもスポーツへ!通信19号今回もお願いします。

BASEBALL in Panzhihua

夏休み真っ只中。前回雨が多いなんて書いたら、その後は毎日うだるような暑さ。晴れるとなったらここの空は徹底しています。「雨の一滴でも降らせてみろ」と言いたくなるような青空ばかり。しかしその中でも選手たちは元気に毎日走り回っています。

 さて今回は去年の夏までチームの主力だった選手たちのお話。自分が赴任してから約半年間毎日一緒に練習したこの子たちは卒業式も終わり、いよいよ9月からは高校生。個人的にも今の選手たち以上に思いいれも深く、彼らの今後は非常に気になるところでした。もちろん中国でも高校入試に当たっての試験があります。この街の場合は全市統一の試験で、日本の大学入試センター試験のようなものです。そして愛すべき彼らのテスト結果はまさに「悲惨」のひと言。言葉がわからない自分が受けてももう少しは取れるんじゃないかと思うくらいの得点でした。まあ世の中そんなにうまくは行きません・・・。

 そしてその後センター試験と同じように自分の得点に見合った学校に進んで行くわけですが、以前も書いたようにこの街には野球部のある高校はひとつもありません。このままでは今まで一生懸命に身に付けた彼らの野球の技術が全くの無駄になってしまい、あまりにももったいない。しかし周さんはじめ多くの人たちの努力にもかかわらず、当初高校側の反応は冷たいものでした。周さんらの要求は(1)ひとつの高校内で野球部、ソフトボール部を組織する。(2)選手たちの大会等での実績を重視し、勉強面で劣るものでも選考の対象にする。(3)週3日程度平日の午後練習時間を確保する。主としてこの三点。ただ中国では高校では勉強だけをするものという考えが根強く(実際中国国内ではスポーツ選手は多くが中卒で体育専門のチーム、組織へ)、なかなかこの条件を飲んでくれる学校はありませんでした。

 しかしテストの直前になってある高校から選手たちを受け入れても良いという申し出がありました。周さんらが狂喜したのは言うまでもありません。学校側の条件は(1)野球、ソフトで合計14人の入学を許可。(2)当校に入学する点数に不足する選手は通常の入学金のほかにお金を納入。基本的にはこのふたつ。そしてここからがまた大変でした。

 野球、ソフトの選手は合計で25人程度。その中に入学の点数に達しているものは5人。(たった!)そして残りの9人の枠に20人、これを絞り込まなくてはなりません。日本的考えでは単純に成績で降順に決めていけば良いように思うのですが、やはり中国、そう簡単にはいきません。まずそこにコーチ、中学校の先生の私見が大いに反映されます。要するにその選手を好きか嫌いか。そしてもっと重要なのはコーチや先生とその選手の親御さんとの関係。このあたりは中国社会の裏の一面です、賄賂などを含めて。これもその国の文化、習慣なので自分が意見をいえる立場にいないのはわかっていますが、なかなかショッキングな会議でした。「憲法とソーセージは作るところを見ないほうがいい」という名言がありますが、この会議も自分の精神衛生上、気持ちの良いものではありませんでした。

 しかし何はともあれ現在では選手の選考も終わり、彼らは高校進学後も野球を続けていけることになりました。選から漏れた子どもたちのケアという重要課題も残っていますが、いずれにしてもこの街の野球の発展にまた新たな1ページが記されたことは確かでしょう。今後、野球ソフトの練習に関しては自分を含めたコーチ陣が出張指導することになりそうです。この試みがうまく行けば野球人口拡大、継続的発展に大きく寄与することはまがいありません。写真の選手たちの今後に期待です。

めいすんず Babes!

さて今回はちょっと格好良い写真での御紹介。顔が良く見えないのですが彼のキャッチボールのフォームからその将来性を知ってもらおうと思いこの写真にしました。うちの期待のサウスポー楊洋(ヤンヤン)。多少気が弱いのと朝早起きできないことが目下の課題なのですが、ピッチャーとしての才能は非常に豊か。日本の同世代の選手と比べてどうとかではなく、自分から見ても成長の限界が全く予想できないことが一番の魅力。ひょっとしたらナショナルチームに入れるかもしれないし、ただのイチ選手で終わってしまうかもしれない。いずれにしても本人の努力次第なのです。

ちなみに彼の目覚まし時計は3日に1回故障するようです、もし彼の言い訳が正しいのなら。今度高性能日本製目覚まし時計をプレゼントしようかと思っています。


Special Thanks

このチームの野球用品の不足は非常に深刻で恒常的。また中国ではなかなか品質の良いものが手に入らないためいつも頭を悩ませているのですが、今回日本からユニフォーム、バット、グラブ、ボール等たくさんのご支援を頂きました。今回機材を送ってくださったのは石川県在住の桶田浩司様と北海道の鈴木収様。桶田さんには昨年上海での少年野球の友好試合でお会いして以来、日頃よりアドバイス、ご指導をいただいていました。今回もお忙しい中本当にありがとうございました。また桶田さんがコーチを務める少年野球チームの百々監督、選手のみなさんもご協力ありがとうございました。鈴木先生は自分が教員時代の大変お世話になった同僚の先生。中体連前でお忙しい中道具集めに奔走いただきご迷惑をおかけしました。また遠軽中学校のみなさん、梅田スポーツの皆様にも重ねてありがとうございました。選手一同大切に使わせていただきたいと思います。


終わりに 

最近我が家ではアリさんたちの大発生に手を焼いています。隙間が被い中国の家屋、仕方がない面もあるのですが、それにしてもテーブルの上に3時間パンを置いておいたらもうそこはアリさんたちの楽園。殺虫剤はあるのですが中国のその手のものをどうしても信用し切れない自分は対応に頭を悩ませる毎日です。何か「おばあちゃんの知恵袋」的なアリさんの退治法はないでしょうか。もしご存知の方ぜひ教えていただければと思います。それにしても強すぎる阪神タイガース、いよいよ優勝が現実味を帯びてきました。優勝の瞬間はかわいい選手たちを放ってでもインターネットラジオでひとり絶叫したいと思います。それではご意見ご感想をお待ちしています。

 

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