2003年6月21日 No,18
 
中国での生活もあと半年になって何が一番印象に残っているかといえば、そりゃ断然「中国の列車」。特にこの街から北京まで47時間かけて移動した去年の夏の日のこと。あの時は北京で合宿をするために選手と一緒に最も値段の安い「硬座」と呼ばれる席に乗っていざ北京へ。

中国の列車は通常3つのグレードにわかれていて、高級な方から「軟臥(個室)」、「硬臥(3段ベッド)」、「硬座(イス席)」。基本的に外国人旅行者は「軟臥」に乗ります。ここなら治安、衛生面も問題なく乗務員の接客態度も違います。そしてミドルクラスの中国人、中国滞在が長い外国人なんかが乗るのは「硬臥」。ここも不便はありますがベッドに寝て行けるのでまだ許容範囲。しかし「硬座」の席は過酷です。中国は非常に国土が大きいので、ちょっと列車に乗ると10数時間の移動は当たり前。ですから「硬座」では寝る時だってその硬いイスの上で寝なくちゃならない。ここでは座席番号なんてあってないようなもの。少しでもスペースが空いていれば他の乗客が割り込んでくるし、乗車率200%なんてのも日常茶飯事。

去年の夏といえばまだ中国の表面も理解していない頃。なめていました、4千年の歴史を。10時間過ぎたあたりから車窓の風景に興味がなくなり、20時間経つころには自分の顔の汚れさえ気にしなくなり、30時間目には独り言を発しはじめ、40時間を過ぎるころには自分が現実の世界から離れていくのを実感できます。さすがにこれは辛かった。

ただ中国の列車の名誉のために付け加えておきますが、北京―上海や東海岸の列車ではここまでひどくはないし、列車のダイヤが恒常的に乱れているなんてこともありません。ここ四川はまだまだ開発も遅れているので古き良き(?)中国の姿が見られるんです。あんな経験はもう2度としたくはないですが本当の中国を見たいのなら絶対列車の旅がお勧めです。勇気のある方ぜひ挑戦してみてください。通信18号よろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

皆さんにはすでにご紹介した日本遠征の中止、でもチームではまだ選手に伝えていないんです。自分は早めに伝えた方がいいと思うのですが、まわりは選手のやる気がなくなるのを恐れているのか最後まで隠し通す覚悟のようです。その時の選手たちの反応が今から心配な今日この頃であります。

 さて以前も書いたと思うのですが、中国では素行の悪い生徒に対して、中学校の段階でもかなり頻繁に退学という処分を下します。うちのチームにおいても以前の2人のほかに、先月またひとり退学になりました。理由は度重なるケンカ。改善の見込みがないことで重い処分になりました。繰り返しになりますので処分に対しての考え方はここでは書きませんが、いずれにしても学校の処分によって彼も野球ができなくなってしまいました。しかし彼の野球の才能は、ここでやめさせるのは忍びないほど豊かで魅力的なもの。

 さてわたくし考えました、何とかできないかと。

そして毎朝、彼とふたりだけで練習することに決めました。上に掛け合ってみたものの、彼をチームに戻すという決定は絶対覆せないという回答。でもどう考えてももったいない。日本でなら例えばうちのチームで野球ができなくなったとしても本人が希望するなら他の環境で野球を続けられる。でもこの中国の環境では彼は一生野球ができなくなってしまう。

最後はもうケンカ口調でした。「じゃ毎朝俺が単独で教えるから、それには口を挟まないでくれ」と。これで一応妥協点を見いだしました。ただその後何人か自分の考えに賛同してくれる人が出てきて、今では彼らのサポートも受けながら毎朝ふたりで二時間ほど練習しています。

 しかし自分がここまで頑張ったのに、当の本人はうれしいのかうれしくないのかはっきりしない反応。自分としてはドラマ「スクールウォーズ」のように「ありがとうコーチ!これで俺も野球を続けられるよ(号泣)」なんていう反応を期待していたのに実際は・・・、

自分「お前明日からまた野球できるぞ!」   彼「はぁー・・・・。」

自分「うれしいだろう?」          彼「一応・・・・・。」 

自分「何か言うことあるか?」        彼「ところで何時からですか?」

自分「・・・・・・・。」 

まあ世の中そんなに感動的にはできていませんね。でも彼のお母さんは非常に感謝していました。「あの子もきっとうれしいんですよ」と。しかし当の本人は毎日飄々と練習をこなし、大して物も言わずに帰っていきます。ただ絶対野球だけは続けたいという意気込みはすごく感じられます。今後は北京などにある野球学校のテストを受け新たな道を模索して行くことになります。ですから彼の本当の試練はまだ始まったばかりかもしれません。自分の希望としては彼がオリンピックにでも出てインタビューで「いま自分があるのは以前僕を支えてくれた日本人コーチのおかげです!!」なんて言ってくれればうれしいのですが。でもまずそういうことはないでしょう、あいつの性格じゃな・・・。

 人間見返りを求めて行動を起こしてはいけません。彼がこの一件を通じて人間的にも成長してくれることを祈りながら自分も頑張っていきたいと思います。


めいすんず Babes!

天気の悪い日に撮ったのでちょっと暗い感じの写真ですが、ふたりとも非常に元気の良い子達です。今回ご紹介するのはうちのチームの中でも特に初心者のふたり。写真上が陳銀(チェンイン)、そして衣一(イーイー)

最近さすがにルールも覚えてキャッチボールくらいはできるようになって来ましたが、当初は本当に打ったら三塁に向かって走り出すような子たちでした。でも中国ではテレビなどで野球を見る機会は本当に少なく、初心者の子たちはもの凄い格好で投げたり打ったりします。まるでコントにでてくるような動きで。子どもたちに失礼だとわかっているのですが、どうしても笑いがこらえられない時もあります。このふたりが左手用のグラブを右手につけて悪戦苦闘しているのを見た時は思わず吹き出してしまいました。いずれにしてもふたりとも毎日頑張っています。今後に期待です。



チーム近況

9月から新しい学年がスタートする中国の学校では今月は1年の総まとめ、学年末テストの時期。今週からチームの練習も休みになり選手たちもテストに向けて猛勉強中です、たぶん・・・。さて選手たちの苦手科目第一位はダントツで英語。これは日本でも同じかもしれませんが彼らの英語嫌いは相当なものです。中国の英語の授業もまさに日本とそっくりでとにかく単語を覚えて文法中心に学んでいくというもの。どれだけ英語を習得できるかは別にしても授業がとても退屈に感じるのは確かなのではないでしょうか。以前あまりにも英語の授業でやる気が見られないというので彼らに言いました。

自分「オランダやベルギーではかなりの割合で中学生が英語を流暢に話すんだぞ」

選手たち「そりゃオランダ人やベルギー人は白人だからだよ!」

こんな愉快な子どもたちに囲まれて毎日野球しています。オランダ、ベルギーがヨーロッパにあることを知っていただけでもよしとするべきなのでしょうか・・・・・。


終わりに 

さて何やらこの頃雨が多いと思っていたら実は雨季に入っていたようなのです。先週はほぼ毎日雨が降っていました。去年はこの雨季の時期にずっと遠征に出ていたため、この街でこんなに雨が降ることを今年初めて知りました。しかし雨だけならまだしも毎晩雷がゴロゴロと鳴るのには参ります。パソコンも開けないし、頻繁に停電にもなりますし。去年だったらパソコンが開けなくても影響はなかったのですが、今年は阪神の試合結果を見るのが1日の締めくくりになっていますので。それにしてもこのまま行けば・・・・・・。いやいや油断は禁物です。阪神ファンの皆さんあと4ヶ月気を引き締めて見守っていきましょう。

 

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