2003年5月25日 No,16
 
今週はなぜか雨がたくさん降った攀枝花。そのおかげで涼しく過ごしやすい日が続きました。しかし洗濯物がなかなか乾かない弊害も。日本なら梅雨時なんかはごく当たり前のことなんですが、この街に来てからはたった3時間で洗濯物が乾くことに慣れてしまっていたので、たったこれだけのことにも「弊害」なんて言葉を使ってしまいます。ところで洗濯といえば我が家の洗濯機の調子がどうもおかしく、この1ヵ月は洗濯板を使いゴシゴシ手洗いしています。そして実感したのは昔のお母さんたちの偉大さ。中学校の時の教科書に「高度成長期、洗濯機が家庭に急速に普及して主婦の労働時間が大幅に短縮された」なんてくだりがありましたが、教科書を読んだところで「へぇーそんなもんかいな」くらいにしか思いませんでしたが実際自分でやってみると洗濯という作業がいかに重労働であったかがわかります。洗うのはまだしも脱水、水を絞りだすという作業は本当に大変。毎日家族の衣服全てを洗っていたらそりゃ自分の時間なんてなくなるはずです。改めて祖母に対する尊敬の念を深くするとともに現代日本人のひ弱さを感じています。ただケンカ口調で「修理に何日かかってんだよ!」と中国の電気屋さんに苦情の電話をすることもやっぱり忘れない現代日本人なのでした。通信16号よろしくお願いします。

BASEBALL in Panzhihua

以前も書きましたが選手たちのルーティーン(平日)は朝7時過ぎから12時半まで午前中の授業、午後は2時半から3時半まで授業、その後ユニフォームに着替えて6時半まで練習、そしてまた学校に戻り夕食をとって9時半まで夜の授業。いくら昼の休みが日本より長いとはいえこれは過酷なこと。この点は自分自身選手たちを非常に尊敬しています。

 さて今回書きたいのは夜の授業について。自分も時間がある時は様子を見に行っていますが、とてもやんちゃなうちの選手たち、ケンカなどの問題を起こすのもほとんどがこの夜の時間帯なのです。それには大きな要因が。   

というのもこの夜の授業、ほとんどが自習なのです。黒板に書かれた課題をその時間を使って自分でやるわけです。しかしその課題、英語なら新しい課の単語を10回ずつノートに書くとか、国語の教科書を読んで予習するとかそういった類のもの。これに全く意味がないとは言いません。ただ練習後にわざわざ学校で疲れた頭でやる必要があることなんでしょうか。以前学校側にも言ったことがあります。「夜の自習の効果は自分の目から見てもとても大きいとは思えない。それなら宿題にして早く家に帰したほうがいいのではないか」と。そうすれば問題発生も防げるのに。しかし学校側は「規則だから」の一点張り。午後練習に時間をとっている以上、夜の補習は当たり前だというのです。ただ体育クラスの午後の練習は体育や音楽の授業としてカウントされており、その分日常、体育音楽の授業は削られているので国数英などの主要教科の時間数は普通クラスと同じなので、夜の授業の重要度はそう高くはないはずなのに・・・・。

自分は夜も先生たちが授業をしてくれるのであれば何も文句は言いません。しかし現状ではただ教室にいて、訳も分からない英単語を書き続けるのみ。そして問題が起きると生徒たちを処分する。これじゃ何もいいことがない。学べることは「疲れた体でいかに居眠りしないか」ということだけ。先生もいない中で中学生が2時間真剣に学習に取り組むなんてことは至難の業です。

自分の考えはあくまで理想論であり、文化の違いを考慮していないものです。ただ議論の余地はあると思うのです。確かに対外的には見栄えはいいでしょう、「疲れていても勉強も頑張っています」、「うちは文武両道がモットーです」こんな感じで。しかし子どもたちにとってはベストな状況ではないはずです。日本の学校もそうですが、問題が起きた時には恐ろしく迅速に、そして厳重に処理します。しかし問題発生を予防する手立てを取っているのだろうか。今後は選手たちには問題を起こさせたくないというのが自分の本心です。大人の論理を振りかざすのではなくもっと現実的な視点から彼らを教育して欲しいものです。


日本行狂騒曲

わかっています、可能性はどんどん少なくなってきています。ただ選手も楽しみにしていることだし今は可能性を信じて準備だけは。さてさてうちのお子様たちは日本に行ってやりたいことがたくさん。お刺身を食べ、相撲を見て、畳の上で寝てみる。ただ選手たちは試合などでほとんどが上海や香港に行ったことがあり、「先進国」としての日本にはほとんど興味がないようです。自分も上海でその大都会ぶりにはびっくりしたわけで、いくら中国の田舎に住んでいても彼らが東京の街並みに仰天するということはなさそうです。しかし日本にある彼らが最も興味を引かれるもの、それはディズニーランドなどの大型遊園地。確かに中国では子どもが行って楽しい行楽地は非常に少なく、とにかく興味津々の様子です。翻って大人たちの日本観といえば相変わらず昔の日本映画から得たものばかり。先日この街の副市長さんとご飯を食べた時にも「あれだよな、日本人は畳の上に布団を敷いて、そして必ず木刀を横において寝るんだよな」とものすごい日本観を披露。よくよく聞いてみるとそれは中国でも人気の高倉健のヤクザ映画でのシーン。なんとか北海道遠征が実現して、子どもたちには遊園地、副市長さんには「網走番外地」観光が実現すればいいのですが・・・。


めいすんず Babes!

最近すっかりご無沙汰だった選手紹介。まだまだたくさんいるのでどんどん紹介していかなくてはならないのですが、最近は選手の個人写真も撮っておらず、今回は前回も使った写真で一気にふたり紹介します。

写真用の最高級笑顔を見せている(左)のが王軍(ワンジュン)、自分で壊した鍬を片手に苦笑い朴攀(ピャオパン)、ともに現在評価急上昇中。

王軍は名前は強そうですが精神面の弱さが課題。しかし最近特にバッティングが上達してきたことで野球の楽しさに目覚めたらしく、非常に意欲的に練習に取り組んでいます。練習中のチームの雰囲気が悪くなってきた時に一番先に声を出すのも彼。今後に大いに期待です。

朴攀は苗字でお分かりだと思いますが朝鮮族。当然彼のルーツは東北地方(中朝国境付近)でおじいさんの代に四川に移り住み彼の名前は攀枝花のひと文字をとってつけられたようです。彼はまだ13歳、技術的には足りないものも多いですが随所にセンスを感じさせるプレーをします。ただ大きな問題は信じられないくらい足が遅いこと。現在つま先で走れるように猛特訓中。

終わりに 

先週体育局の中で人事異動があり、周さんが今までの野球ソフトの総監督から外れ、ちょっと自分が苦手な文さんが総監督になりました。それに伴ってコーチ陣の入れ替えもあり自分は野球の監督から外れました。要するにクビ。監督を外れ中国人コーチの補佐をしていくことには異論はないのですが、その理由には納得できないものばかりでした。頭にきて帰国してやろうかとも思いましたがこれも文化の違いだと思って受け止め、今後も前向きにやっていこうと思います。一年半が経って再確認、中国人との協調は難しい。国民感情も含め中国で働く日本人の方は多かれ少なかれ感じていることだと思います。4千年の歴史はダテじゃありません。奥が深いぜ中華人民共和国。

 

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