2003年4月19日 No,13
気にしないようにしていても、さすがにそうもいかなくなってきた流行肺炎「SARS」。中国政府の患者数隠しにWHOもご立腹のようですが、最近では中国人民の関心も高くなってきたような気がします。今日も練習前選手のお母さんから子どもが咳が出るので肺炎の検査にいってくると連絡がありました。まだこの街では感染者は出ていないようですが心配になる気持ちもよくわかります。まだ中国国内では感染拡大抑制の兆しもほとんど見られないようですし早く対策法が確立されることを願うばかりです。ところで最近自分の周りでは「非典型肺炎」(SARSと同じもの?)の非典型という言葉がちょっとしたブーム。中国語でも「典型的ではない、前例がない」などの意味なのですが、「非典型失恋」、「非典型夫婦喧嘩」、「非典型日本人(?)」などなど。しまいには選手までも「今日の練習は非典型つらい練習だったぜ」などと言い出す始末。おめーらの国の対応の遅れで沢山の人が迷惑被っているんだから、責任を感じろ責任を!

香港や北京が大変な状況でも攀枝花はやっぱりのどかな毎日です。平和が一番。今回もよろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

 はじめに言っておきますが批判するつもりは全くありません。今回は中国のスポーツ界の裏事情を少し。

 中国では子どものスポーツの大会での年齢詐称がとっても盛ん。問題は中国の戸籍にあります。戸籍、中国語では「戸口」。内容は日本とほとんど同じで出生地、住所、両親の名前なんかが記載されていて、もちろん生年月日も載っています。ただ中国の場合この生年月日がお金を払ったり、簡単な手続きをしたりすることで変えることができるんです。少なくてもこの街ではそうです。ということは・・・、ある有能な選手がいます。ただ彼は年齢が高すぎて大会には参加できない。そんな時あなたが中国人でその子のコーチだったらどうしますか?そうです、戸籍を書き変えればいいんです。 

 日本では多くのスポーツの大会が中学、高校、大学など学制のカテゴリーによって参加基準が分かれているので甲子園に大学生が参加することは100%不可能ですし、年齢詐称なんて世論が許さない。しかし中国では野球を含め生年月日で参加資格が規定されているケースが多いので(例「1985年9月1日以降に生まれたものが参加すること」)それさえクリアしていれば誰でも参加できます。

 しかし問題は年齢の上回る子が戸籍を書き変え、下のカテゴリーのゲームに参加することにあります。悲しいかなうちのチームでもそういったケースは多々あります。なんたって周さんが大好きなんです、戸籍改ざん・・・。今自分が把握している最も大きな改ざんは3歳。彼は今年18歳、しかし戸籍上ではまだ15歳なんです。自分もはじめて知った時はびっくりしました。中学生の大会に高校3年生が参加することと同じなんですから。他にも去年の夏の世界軟式少年野球の大会(東京)にうちのチームの選手も3人中国代表として選ばれた際、彼らは15歳。このときは上からの指示もあったのですがやはり年齢を書き変えました。はっきりいってかなりの反則行為です。しかも一見してわかる体格の違いに日本チームからは不満の声が上がっていたようです。

 ただそれをもって中国人はずるいとか汚いと決め付けては欲しくはありません。その国にはその国の習慣があり、それはスポーツにも。先述した日本チームの対応にしても日本は世界で最も野球環境が恵まれている国のひとつです。環境がありお金もある。ボロボロの道具を使った中国チームが年をごまかしたくらいでそんなに目くじら立てて怒らなくてもいいはずです。もっと練習して強くなればいい。それだけのことだと思います。

そして周さんにもかなり同情する点はあります。中国では子どもの大会といえどもそこでの好成績は体育局の予算や周さん個人の評価にものすごく関係してくるし、中国人は対外的なメンツをものすごく気にする傾向があります。自分が指導しているチームがひどい負け方をしたら、それこそ大変。周さんには自分や前任者も何回かやめるように促したことはあるのです。ただ周さんの立場もわかりますし簡単な問題ではないですね。

スポーツに関しては国によって非常にとらえ方が千差万別。中国のようにスポーツと政治が非常に近い国もあれば日本のようにスポーツ選手に必要以上にロールモデルとしての行動を望む国もある。一面だけ見て批判するのは簡単ですが自分自身もっといろんな要素に目を向けなくてはいけないと感じています。ただ司馬遼太郎を愛読書にする自分にとってはやっぱり男らしくフェアに戦ってほしいなという希望は強いです。「お前今年歳いくつ?」「え?ホントの、うその?」こんな会話はやっぱり抵抗あります。だからもう年齢改ざんはやめようね、周さん。


周さんのひとり言

前回ご紹介したように胆石の手術で頑張った周さん。その後悪いところは一挙に直してしまえという考えから痔の手術にも踏み切りました。しかし「痛み」という点では胆石のときよりもつらかったようです。毎日朝のおトイレは猪木のテーマソングが必要なくらい苦しいもののようです。(写真は痛みに顔をゆがめる彼)ただ周さんの気がかりは痛みでも仕事復帰の遅れでもないようです。それは、

「俺の手術をしたのが女医さんで、しかも超美人なんだ・・・。」

勝手に言ってろバカオヤジ。


選手近況

こ最近通信上でも愉快な大人たちのことばかり書いてしまい、選手の情報が少なくなっていましたがみんな毎日元気に頑張っております。ところで去年の夏まで主力だった選手たち(15、6歳)は高校入試が間近に迫ってきました。ぜひとも野球で鍛えた集中力で頑張って欲しいものです。また下の学年の選手たちも今日から中間テストがスタート。そのため練習は3日間お休み。ところでこのテストには毎回自分も顔を出すのですが今回はあまりテスト会場に入るなとのご指示。なぜかって、そりゃ自分がいると選手たちがあまりカンニングできないから。体育クラスはやっぱり勉強面では劣るのでその辺は大目に見ようということらしい。このご指示担任の先生から出たものです。ただし中国では基本的にカンニングはものすごく厳罰に処されます。あくまで攀枝花二中体育クラスでのお話。まあしかし勉強もできて野球もすごいなんて奴はめったにいるものではありません。


終わりに 

SARS(流行肺炎)については中国政府の対応が国際世論でかなりたたかれているようですね。ただここ2,3日は政府も真剣に対策を取るようにとの指示を出したようで今後に期待したいと思います。しかし四川省を含む中国南部で活動する医療関係の協力隊員には感染の危険が日増しに高くなっているということで出勤停止命令が出されました。またこの街に住むアメリカ人の友人のところにもアメリカ大使館から注意勧告が出されたようです。心配してもきりがないですが自分でできる予防だけはきちんとやっていこうと思っています。

 

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