2003年2月12日 No,8 |
ここ四川省攀枝花での生活もはや1年、生活環境は日本で想像していたよりもかなり快適。気候もいいし、パソコンの接続状況も悪くない。特に北海道生まれの自分にとって2月に半袖で外を歩けるのはこの上ない幸せ。ただ夏になると死ぬほど暑いのも事実ですが・・・・。 そんな充実した生活環境の中でも食べ物に関しては特に恵まれているかも。中国にはそれぞれの地方で特色を出した料理があります。広東や上海、そしてもちろん北京料理も。ただここの人間は、俗に言う中華料理の中で四川料理は一番美味しいと自信満々です。確かに他に比べて味が濃厚だし、食材にも恵まれていると感じます。ただ自分は日本人、どうしたって日本料理が恋しくなるし、美味しく感じる。真面目な話、夢にまで出てくるほど、体が日本食を欲しいています。しかし周りの人間は自分のそんな思いも知らず、「中華料理は世界で一番おいしいだろ、フレンチよりもイタリアンよりも。しかも中華料理の中で四川料理は一番おいしい。だったらお前は毎日世界で一番うまい料理を食ってるわけだ。」彼らは冗談ではなく真剣に言っています。 だけどお前ら他の国の料理食ったことあんのかよ・・・。通信8号よろしくお願いします。 BASEBALL in Panzhihua テーハンミング!の大声援に後押しされて去年のワールドカップで韓国代表が準決勝まで進んだことは、世界中に大きな衝撃を与えましたが、彼ら自身の予想をも上回る好成績の裏にはオランダ人監督ヒディングのチーム作りの成功がありました。いくら通訳が付いていようともヨーロッパとは全く環境の違うアジアに来ていい仕事をすることはとても大変なことだったはず。 さて自分も国籍が中国ではないので一応外国人コーチ。しかもヒディングとは違って同じアジアの国からやってきたわけですが、それでも戸惑うことが多い毎日です。そこで今回は今までの自分のやり方を反省する意味でもちょっと。 先日あるコーチから、 「正直に言うと、お前ら日本人が子どもを教えることでいい面もあるけど、困る面もいっぱいあるよ。」という話をされました。彼とは何でも言い合える仲なのでどうしてそう思うのか聞いてみたところ、 「自分たちが日本人に頼りすぎて、以前のように積極的に子どもを指導する姿勢がなくなった」 「子どもたちが学校の中でも、他の中国の子とはちょっと違う価値観を持つようになった」 などという理由から彼はそう考えているらしいのです。
また、大人よりも感受性が豊かであろう選手たちにとっては、自分の話すこと、求めることの中に、親や学校の先生、他のコーチとの微妙な違いをより敏感に感じ取っているはずです。そしてそれが大人の眼は必ずしも歓迎すべき現象とは映っていないのかもしれません。 このようなことは自分も去年からずっと気になっていた問題でした。自分は2年という任期の中でいろいろ周りのコーチ、選手たちに伝えたい。しかし「しない勇気」というのも非常に大切なのではないだろうかと。当然これは仕事をしないという意味ではなく、彼らに歩調を合わせ、自発を促すような仕事のやり方を見つけなくてはいけないということ。ただこれを実践するには非常にストレスを感じます。時間と相当な我慢を覚悟しなくてはならない。しかし違う価値観を持った人たちといい仕事をするためには絶対不可欠な要素だと感じるようになりました。 選手たちの変化についても、日本のように考えれば違う国の価値観を学び、違う考え方を持てるようになって、むしろ好ましいともいえるかもしれませんが、中国では、ましてやこんな田舎ではまだそこまでを求めていない。彼らの今後を考える上でも決してプラスになる変化ではないのかもしれません。 自分の活動は日本の野球を彼らに「教えてやる」ことでもなく、日本の価値観を押し付けることでもない。お互い交流し、理解し、彼らと一緒に進んでいくことが、最も求められていることかもしれません。1年前、赴任の際に心に誓った大切なことを改めて思い出させてくれた最近の出来事でした。 しかしヒディングを引き合いに出すとは、自分の頭も少し壊れてきたかも・・・・。 めいすんず Babe
しかも彼は去年の9月からチームでただ一人、練習を1日も休んでいない!休まない事が素晴らしいと考えるのはいかにも日本的思考ですが、それにしてもこれはとっても偉いこと。写真じゃわからないかもしれませんが、ルックスも良く女子にも大人気の彼の今後にこうご期待! 終わりに 沢木耕太郎氏が著書の中で「何度その国に赴いても結局その国を理解することなんかできない。わかるのは何もわからないということだけだ。」と書いていますが、自分も、たった何年か住んだだけで「中国はこうだ!」と断定的に話す人に非常に抵抗を感じます。自分はこの先50年中国に住んでもこの国の本質なんてわからないだろうし、むしろ住めば住むほどわからなくなるような気さえします。今回の出来事を通して異国で仕事をすること、理解することの難しさを再確認しました。 今回の通信は今までで最高の堅苦しさになってしまいましたが、次回からはリラックスして読める通信作りを心がけたいと思います。それではまた。 |
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