2003年2月11日 No,6
 
この国でも春節を迎え、遅ればせながらついに新しい年が明けました。自分は雲南省の麗江というところで新年を迎えたんですが、いやはやとにかく寒かった。今年はアジア各国で厳冬のようでここも例外ではなく、例年は降らない雪まで降ってしまいました。雲南省はダッカなんかと同じくらいの緯度なのにですよ!

で、中国の正しいお正月の過ごし方、それは飲んで飲んで飲みまくること。先の健康診断で痛風の徴候を指摘されて、ビールは絶対に飲まないって心に誓っていたのに4千年の歴史の前に押し切られてしまいました。しかも麗江は海抜が2000m以上もあるもんだから酔いが回るのも加速度的。大晦日は意識もうろうとする中で春節のもうひとつの風物詩、爆竹の大音量を聞きながらヒマラヤからの冷たい風に吹かれて新しい年を迎えました。改めて今年もいい年になりますように。

それにしてもどうして北海道出身なのにこんなに寒さに弱いのだろうか。超寒がりな自分を再確認したこの春節でした。通信6号よろしくお願いします。


BASEBALL in Panzhihua

春節が明けて我がチームも練習を再開しました。選手たちはたった2週間弱の休みだったにもかかわらずブクブク太って登場してくるし、グランドは春節の間にこの街の皆さんが爆竹や花火の燃えカスで徹底的に汚してくれているし、ストレスを感じながらの練習再開となりました。

 ところで今回は中国の新年ということもあってこの街の野球の将来について。

ここの野球には中国の他の街には見られない素晴らしい歴史があります。ただ輝かしい未来があるかというとかなり懐疑的。一番大きな問題は金銭面の問題。今回はこれについてちょっと詳しく。

中国で野球チーム(ユース年代)が積極的に組織されている街といえば北京、上海、天津、広州、成都などのいずれも国際的な大都市。翻ってこの街は典型的な中国の地方都市で、当然体育局にまわってくる予算も微々たるもの。しかもそこから各種目にお金を振り分けるわけで必然的にチームの活動費用は常に不足している状態です。現在チームが使用している道具の大多数はJICA(国際協力事業団)の青年海外協力隊員への活動支援経費というお金で購入したもの。しかし消耗も著しくいつまで持つかわからないものも多く、特にボールの不足は顕著で補修に補修を重ねて使用しているのが現実です。(写真も自製の防球ネットを補修している様子)

また遠征費の不足も深刻です。大きな大会は東海岸で行われる機会が多く、わずかな予算の中で選手たちの遠征費を捻出するのは至難の業。この街はかなり内陸に位置しているため、例えば上海までは列車に60時間以上揺られて移動することになり、その列車代だけでもかなりの額が必要になってきます。ですから最後には親御さんに負担していただく形になるのですが、その負担額は前回の香港遠征を例に取ると1200元(日本円で2万円程度)にもなり、これは実に一般家庭の月収に相当する金額。これではどうしても試合に参加する機会も制限せざるを得なくなるし、道具の不足は選手たちの技術レベル向上の大きな妨げになります。

 他の都市ではどうかというとまず行政規模の違いなど大前提のバックグラウンドが違うだけでなく、プロチーム(現在では北京、上海、天津、広州の4チーム)や社会人チームの傘下で組織されているチームが多く、ハード面での不安が全くないチームがほとんどです。また平均所得が違うし、企業スポンサーが付いているチームさえあります。

 現状ではこの問題に対する有効的な対策は皆無といってもいい状態です。ただ自分は安易な資金援助等でこの問題を解決しようとは考えていません。とにかく大前提はこの街の自助努力。周さんを含め自分の周りの中国人はやはり外からの援助に期待する嫌いがありますが、それを続けていてはいつまでも根本的な問題の解決には至りません。真剣に問題の解決を図るのなら、まずはこの街の人間が今の何倍も努力すること。それなくして明るい未来はないと信じています。

体制の違う中で日本人の思うようにことが進まないのは理解していますが、野球にかける情熱があるのに金銭面の問題で子どもたちの将来が廃れていくのは非常に悲しいことです。早急に解決策を見つける必要があると感じています。

間違ってこの街からメジャーリーガーでも出たら、それまでの投資なんか一発でペイできるんだから・・・・。

みんな頑張ろう。


調子に乗って日記などと書いてしまいましたが、麗江滞在中はほとんど酔っていたので書くことなんてありません。ちょっと麗江のご紹介。なんで自分が何回も麗江に行くかというとそれは周さんの実家があるから。周さんは中国で大多数を占める漢族ではなく、麗江を中心に独自の文化を築いてきた少数民族「納西(ナシ)族」のお方。中国には全部で56の民族がいるとされていますが納西族もそのひとつ。麗江では今でもその納西族の文化の独自性が守られており、国内の他の地域とは違った中国が垣間見られます。みなさん餃子食って、自転車乗ってるだけが中国人じゃないんですよ。で、麗江はとにかく町並みが綺麗、特に世界遺産に指定されている「古城」では古い家屋、町並みがそのまま残されていて、歩いているだけですごく心洗われる感じ。まあ見所は他にもいっぱいありますが、最近は日本からのツアーコースにも入ってきているようなので機会があったら調べてみてください。ちなみに周さん曰く、納西族の女性は56民族の中でも一番優しいお心を持っているらしいです。あ、それと周さんの奥さん、王さんはコテコテの漢族ですのであしからず。


終わりに 

今回はこの街の抱える最大の問題について書きましたが、スポーツや芸術を発展させる上で最大のネックになるのは、どこの国でも資金の問題ではないでしょうか。今までは前任者の努力で在中国の日本人の方から遠征費用の支援なども頂きましたが、問題は自分たちがいなくなったときに果たしてどう対応していくのかということです。自分も前述したように彼らの自助努力に期待する強い決意を持っていますが、背に腹は替えられない時はあります・・・。今後とも攀枝花青少年野球チームを重ねて重ねてよろしくお願いいたします。

 

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