ミトンとYoko&Ianの大騒動2000年1月


1月1日(土)

 大晦日、ミトンに逃げられたMommy。しかし、久し振りに外に出て興味津々のミトンは珍しいものに気を取られている隙に保護されてしまった。お客さんが来るのを前に大騒動を起こしていられない私は密かに胸をなでおろした。

 年が明けた今日。出前が届いたときにミトンは再度脱出を試みた。外は暗く、あの色の猫では闇にまぎれてしまっては探すのは難しい。とはいえミトンの先を読んでしまっているMommyは落ち着いて外に出た。案の定、隣の家の近くに行っている。だったらこのまま窓を開けておけば帰ってくるはず。今日はそんなに寒くないし、それにお客さんだって来ているし、いつまでもミトンにかまっていられない。

 と私は家に戻りかけた、その時、ミトンが足元に……。「えっ?帰っちゃうの?」とでも言いたげな顔で見ている。近寄った瞬間、彼は捕らえられた。またも脱出失敗。

 新年早々、Mommyがミトンに逃げられたと言うことは、猫娘には内緒。

 と言うのも、年末の北京では「猫さらい」のことが新聞テレビを賑せていたのだ。なんと南方に食材として売り払われていたと言う。龍に蛇、そして虎に猫の肉が使われる広東地方の料理がある。「龍虎闘」という料理の材料になるのだ。猫さらいはそうとうの儲けを得ていたらしい。北京あたりは野良猫が少なく、飼い猫が多いので病気の心配がないのも猫さらいが跋扈する理由だとも言う。以前は「巨大猫だけどミトンはかわいいからね。注意しなさいよ」といわれていたが、最近は「巨大猫だから食べるところが多いし、危ないわよ」といわれるようになった。猫と猫の飼い主にとっては災難だ。とにかく、注意するにこしたことがないので、猫娘が帰ってきたら遠回りに十分注意するように伝えよう。

 新年早々、暗くなるような話題で……ゴメンナサイ。

 

1月10日(月)

 猫娘が土曜日に帰ってきた。弟、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒だ。家の中が急に賑やかになった。ミトンも興奮気味?

 そんな折、ミトンに慣れていないおじいちゃんがへまをした。新聞を取ろうとした瞬間にミトンに逃げられたのだ。玄関のドアを開けたままで外の新聞受けから新聞を取ろうとするなんて、なんと無謀な!!

 外は寒いし、暗くなっている。あの色のミトンを探すのは至難の技。

 と、気がつくと、ミトンは他の猫と追いかけっこをしているではないか。ぽんずは捕まえる事をあきらめ、しばらく様子を見る事にする。

 しかし、ピアノのレッスンを終えた猫娘が、おじいちゃんがミトンに逃げられたことに気づき、目を赤くしている。焦るおじいちゃん。

 しばらく外をうろつき、「こっちに来たぞ」の声にカーテンを開けると、いつもの窓の外に、ミトンが寒そうにうずくまっている。窓を開けるとそそくさと中に入り、自分のえさのところに直行。わき目もふらずに餌を食べている。

 餌を食べ終えると、その部屋の一番暖かいスポットに直行。気持ちよさそうに寝てしまった。

 猫娘は唖然、呆然。言葉もなく、自分の晩御飯を食べ始めた。 

 

1月14日(金)

 夕食の時間、猫娘の弟がやけに窓の外を気にしている。そして一言、「ミトン帰ってこないなぁ」。……一同沈黙。

 「えっつ?ミトンまた逃げたの?」
 「うん、僕が外から帰ってきたら、腕の下から、外に行っちゃったの」

 外を見ると、雪の上に新しい、猫の足跡が……。そういえば、ちらし寿司の準備をして、魚を出していたのにミトンが来なかった!

 窓を開け「ミト〜〜ン」と呼ぶと、「にゃぁ〜〜」という返事が聞こえる。「Yoko、玄関から外に出てみて!!」というマミーの声に猫娘が玄関を開けると、ミトンが一目散に家の中に走りこんできた。これで一件落着。

 こんなに逃げられていて、知り合いのねこちゃんを預かって問題ないのだろうか???

 今回のミトンの逃亡、実はおじいちゃんも知っていた。しかしどう言うわけか誰にも言わなかった。なぜだろう。

 ミトンは、外から帰り、身繕いを終えると、魚の臭いに気がつき大騒ぎ。そしてお刺身にありついた。満足そうなミトンだった。

 

1月20日(木)

 最近、ミトンは逃げ出しても、玄関の前に座っている事が判明した。しかし、捕まえようとすると、逃げ出す。ところが知らん顔をしていると、こちらの様子をうかがいながら、あちらのほうに走っていこうとする。

 そこで、玄関のドアを開け、ミトンに気にしているそぶりを見せながら、奥に引っ込んだ。するとミトンは様子を見に家の中に入ってきた。なんて単純な猫。でも、一安心。

 このミトンの行動を発見したのはお手伝いさん。彼女が帰宅準備をはじめると、いつもなら彼女の後について回るミトンが、なぜか途中で引き返したその時。猫娘の弟が玄関を開けようとしていたときだった。そして逃げ出したミトン。ところがお手伝いさんが外を見てみると、なんと玄関のちょっと前にきちんと座っているミトンが。彼女はそれを発見、私に報告した。その後、ミトンを捕まえようとすると逃げるが、なんのそぶりもしないと戻ってくる事に気がつき、寒いけれど玄関を開けておくと、案の定ミトンは帰ってきた。

 これで、なんとかミトンについては解決した。しかし、外にはミトンと同じサイズの猫が一匹、いつも彼の出てくるのを待っている。10日に追いかけっこをしていた猫だ。その猫がミトンが外に出たときにその場に居合わせたら万事休す。運動会が始まり帰ってこないに決まっている。

 はてさてどうなる事か……乞うご期待???

 

1月24日(月)

 我が家では、冷蔵庫代わりに縁の下に野菜を貯蔵している。日本なら、台所の下にちょっとしたスペースが区切られているのだろうが、ここは中国、台所の床に作られたはずのスペースは縁の下全体に広がっている。ちょっと想像がつかないかもしれない。

 そこに保管している野菜を取ろうとした隙にミトンが下にもぐりこんだ。区切られたスペースの中を行ったり来たりしているとはわかっていても、それではすまない。なんとかミトンを引き上げねば……。

 ところが闇に解けこむような色をしたミトンは縁の下を見てもなかなか発見できない。……その時、猫娘はピアノのレッスン中であった。

 魚肉ソーセージにつられそうになったことがるミトン。その臭いにもなぜか姿を現さない。なんとか引き上げねば、部屋中が寒くなる。北京はまだ10年来の寒さが続いている。そうだ、ミトンはぽんずの襟巻きにまとわりついていた!!それを思い出したぽんずは、大切にしている友達から贈られた襟巻きを縁の下でぶらつかせる。……とミトンが姿を現した。そして襟巻きで遊ぼうとしている。その好きをねらいぽんずはミトンを鷲掴み、というかミトンを捕まえ引き上げた。ミトンが気がついたときにはすでに遅し。縁の下への扉は閉ざされていた。

 猫娘がピアノのレッスンを終えたころには、ミトンは優雅に家の中を歩きまわっていた。

 猫娘は、この騒動を知るよしもない。彼女にこの一件を教えようなんて、そんな勇気のある人間はいない。そしてミトンはさも良い仔であったようにレッスンを終えた猫娘の足元にまとわりついていた。


<<back<< ぽんず 在 北京 >>next>>
過去のアルバム