北京に暮らして
 
41:Field of Dreams

2003/04/14

かつて北京には、形だけの野球場しかなかった。

ガチガチで、スライディングでもしようものなら怪我をしてしまいそうな、
そんなグランドしかなかった。
アジア大会がきっかけである程度の形が整えられたが、
日本のプロ野球選手(二軍だが)が訪れたときには、
小石拾いからはじめたと言う。

オリンピックが視野に入るようになって、
中国も野球に力を入れるようになり、アメリカのAAAのチームや、
日本のプロ野球の二軍が交流で訪れるようになったのが2000年。
その年にようやく北京のグランドも、外に出しても恥ずかしくないように なった。

そんな球場でずっと活動をしてきたのが、私がマネージャーをしている 野球チームだ。
ガチガチのグランドで砂まみれになって試合をした時期があって、
グランドの整備中は大学などのグランドを借りて、
その豊台野球場をホームグランドのように使っていた。

ところが中国野球リーグができて、
北京タイガースのホーム球場となったこの球場は、
リーグ期間中の四分の一の試合を開催する。
昨年は試験開催だったからよかったが、
今年からは、3月から6月まで正式に開催されるようになった。

そしてこの期間、私達は活動場所を失う事になった。

どうしようかと、困っていたときに声をかけてくれたのが、
昔から付き合いのあった、北京の野球好きの集まりの団体だった。

彼らは中学校(中国では高校も含む)の野球部の仲間が卒業後作ったチームで、
野球好きがこうじて、野球振興のための民間団体を作ったのだ。
彼らは、サッカーグランドなどを借りて野球教室を行ったり、
社会人のためのソフトボール教室を行ったりしていたが、
決まった場所がなく、いつかはグランドを持ちたいと言っていた。

一昨年、もしかしたら球場を作れるかもしれないと話をしてくれた。
北京市朝陽区の体育委員会が協力してくれそうだと。
それから紆余曲折はあったが、寒さが和らぎはじめるころから工事が始まり、
ようやく形になってきた。
そして、「俺達の野球グランドだ、ぜひ使ってくれ!」と言ってきたのだ。

先日、彼らに案内されてグランドを見てきた。
緑になりかけた芝が、とてもきれいなグランドだった。
「これから使ってみて、砂を改良したり、
あちらこちら手を加えないと いけないとは思うけれど……」
そんな彼らの顔は希望に満ちていた。

地道に野球振興に尽くしてきた彼らの球場をみて、
私はかつての、あの野球場を思い出した。
中国にも野球バカはいるんだなぁと嬉しくなった。

先日、中国のオリンピック関係者のインタビューで、
「野球と武術、どちらかといったら中国は武術をとる」と発言していた。
北京開催のオリンピックで野球が開催されるかどうかは、まだ流動的だ。
でも、彼らはそんな事に負けずに、中国に野球を広めて行くだろう。

彼らの教えた子供達が、中国の野球界で、そして日本の野球界で、
そしてメジャーで活躍する日が、いつかくるだろう。

その日が待ち遠しい。

 
このコーナーは、Ojinさん主宰の≪WEB_熱線≫=市井から見た中国=というメールマガジンに掲載されたぽんずの雑文を転載しています。

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(c)中国歴史・習慣・風俗の雑記帳「ぽんずのページ」2009