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説苑・正諌
螳螂捕蝉、黄雀在後 (蟷螂搏蝉トウロウセミヲウツ


呉王が楚の国に攻め入ろうとしていたとき、大臣たちに「私を諌めるものの命はない。」と申し渡した。

呉王の抱えていた食客の中で年若い食客が、王を諌めようか、諌めざるべきか考えていた。彼は懐にはじき弓を忍ばせて呉王の屋敷の庭に朝露にぬれながらたたずんでいた。それが3日も過ぎたころ、呉王は若い食客に聞いた。「私の前に来い。なぜにおまえは朝露にぬれたこのような姿をしているのだ。」若い食客は答えた。「庭に一本の木があります。その木には蝉がとまっています。蝉は高い所にいて、悠々と鳴き、朝露を飲んでいます。しかし蝉はその後ろに蟷螂がいることに気がついていません。螳螂は体をこわばらせて木にはりついて身を隠し、蝉を捕らえんとしています。しかしその螳螂は背後に雀がいることを知りません。雀は首を伸ばし螳螂を食わんとしていますが、下からはじき弓で狙われていることを知りません。この3つの生き物はただ目の前の利益にだけ思いをはせ、自分の背後に潜んでいる災いなど顧みないのです。」呉王は「わかった」と言うと楚国に攻め入ることを取りやめた。


2001/01/19

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