銀の錠前
留学時代から気になっていたものに、貴金属店で売られている銀(または真鍮)の錠前がありました。もちろん装飾品です。どこにでも売っていたのですが、果たしてそれは何を意味しているのかわかりませんでした。 これは「長命鎖」などと俗に言われる物で「生まれてきた赤ん坊を錠前で現世に繋ぎとめる」と言う意味があり、銀で出来た錠前を子供にする習慣があるのだそうです。これらは赤い絹の紐につるすか、銀の鎖につるした形で贈られます。私がよく貴金属店で見かけたものは、「麒麟送子」や「五福(五匹のコウモリ)」といったデザインの丸い錠前の形をしたものだっでした。(右図参照) 1998年に再び北京に来て、「そういえばあの銀の錠前見かけなくなったなぁ」と何気なく思っていました。(そういった場所を覗かなかっただけかもしれませんが)。心の中のどこかで何かが引っかかっていたことがあり、そして何かのきっかけで李華さん(我が家のお手伝いさん)にあの錠前は一体なんだったのか尋ねてみました。 「赤ん坊の命をこの世につなぎとめておくための錠前よ」とあっさりと答えてくれました。「私はあのデザインが好きじゃなくて、娘には本物の錠前の形をしたものを買ったの。」とのこと。「そういえば、オーソドックスな長命鎖は見かけるけれど、あの形はあれ以来見かけないわ。」とも。 それ以来、その銀の錠前が気になっていました。機会があるとショーケースを覗くのだけれど、なかなか李華さんの話してくれた錠前はありません。あるとき骨董市をひやかしていたたら、形が同じ物を見つけました。だけどあまりにも大きくて、形もよくなく、骨董だとしても欲しいとは思えるものではありませんでした。でも、あの、本当の錠前のような形の長命鎖はあるのだという、そう言う確信はもてました。 そして最近、この長命鎖にであった。写真を見てもらえばわかると思いますが、実はこれは骨董ではありません。文字を見てもらうとわかるように、左から右になっています。昔のデザインで作った最近のものというのが一目瞭然。 この長命鎖は、本当の錠前としても使えるようになっています。かぎの部分もあるのは、外国の影響もあるのか、そういうスタイルもあったのか...。この錠前を見た子供たち、娘は、かぎの部分だけをペンダントにしたいといい、息子は、宝箱の錠前にしたいのだ狙っています。はてさてどうしようかなぁと現在思案中です。 |
2003/04/03
改稿2011年07/11