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 5分銭 


家の中に5分銭が転がっていた。
今の時代子供達だってすら邪魔にするお金だ。
どことなく「子供銀行」と書かれたおままごとのお金を思い出させる。

今時、市場でだって分の単位のお金は受け取ってくれない。
外貨を替えたときにだって、切り捨てられてしまう事もある。
そんな小さなお金だ。
日本円でいったら、1分銭は15銭といったところだろう。
現在一般には10分銭=0.1元にあたる1角が使用通貨の一番小さい単位になりつつある。

しかし李華さんに言わせると、必要なときは必要なのだそうだ。
「最近スーパーで、パックのお肉とか、お野菜とかの値段に”分”がついて
 いるけれど、あと何があるの?」
と聞くと、
「水道料金」と李華さんの答え。
前回書いたように、彼女は四合院に住んでいるが、水道のメーターは四合院にひとつしかなく、1ヶ月の使用量は頭割りにして支払うのだという。
そのときに”分”の単位が出て来るという。
「みんなはお釣りはいらないって言うけれど、毎月の事だからキチンとしなくちゃね」

「そういえば、4分銭あったら手紙が出せたわねぇ」
「バス代も、一番安いのが5分銭だった」
「そうそう、アイスキャンディーなんて2分銭のもあったわよ
 だからね、兄さんとどこかにいくとき、バスに乗らずにアイスキャンディー
 買って食べたもんだわ」

「子供のころ、前門から景山公園まで歩いて遊びに行ったの。
 景山公園にはあの当時では新しい遊具があって皆でよく行ったわ。」
5分銭からそんな話しになった。

「景山公園に行くとき、皆小銭持って行くの。
 バスに乗るためじゃなくてアイスキャンディーを買うためにね。」
前門から景山公園……。北京の地図をお持ちの方は見ていただきたい。
前門の正式名称は「正陽門」。天安門広場の南にある。
目的地は景山公園。故宮の北側だ。

「子供の足で歩いたの?」
「だって、中山公園の遊具は面白くなかったし……」
「確かに、今、子供を歩かせられないわねぇ。車も多くて危ないし……」
そう言う問題じゃない、遠くないの???

「そりゃ遠かったけれど、やっぱり景山にある遊具の魅力が勝ったのよ。
 それからアイスキャンディーの」
「それに、大勢で、大騒ぎして歩くと、結構近いものよ。」
確かに、私も留学時代その程度の距離ならBFとよく歩いたものだ。

「やっぱり、時代が違うのよ。
 景山にあった遊具だって、今見ればたぶんたいしたことないと思うの。
 たかが回旋塔とか、そういうものよ。」

5分銭……今は邪魔にされるけれど、昔はそれで楽しめた。
そんな事を私も思い出した。

前門から景山公園:直線距離で2.5キロぐらいなので、道なりだと3キロ程?

2003/04/11

 

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(c)中国歴史・習慣・風俗の雑記帳「ぽんずのページ」2009