参考文献 - 蘇軾の詞


 

<蘇軾の詞>

なにをご紹介するか悩んだのですが、やはり、有名な「念奴嬌 / 赤壁懐古」が良いのでは???と思い、これにしました。蘇東坡といえば赤壁の賦、後赤壁の賦も欠かせませんが、今回は詞を紹介することが主目的なので、杭州に在任経験もある、蘇東坡こと蘇軾の詞をご紹介いたします。

念奴嬌 / 赤壁懐古

大江東去,
浪淘盡、千古風流人物。
故壘西邊,
人道是、三國周郎赤壁。
亂石穿空,
驚濤拍岸,
卷起千堆雪。
江山如畫,
一時多少豪傑。


遙想公瑾當年,
小喬初嫁了,
雄姿英發。
羽扇綸巾,
談笑間、檣櫓灰飛煙滅。
故國神遊,
多情應笑我,
早生華髪。
人間如夢,
一樽還酹江月。
大江 東へ去り,
浪 淘(あら)ひ盡くす、 千古の 風流人物を。
故壘の 西邊,
人の道(い)ふは 是れ、三國 周郎の 赤壁と。
亂石 空を穿ち,
驚濤 岸を拍ち,
卷き起こす 千堆の雪。
江山 畫の如く,
一時 多少の 豪傑ぞ。


遙かに想ふ  公瑾の 當年,
小喬 初めて嫁し了(を)へ,
雄姿 英發たり。
羽扇 綸巾,
談笑の間、  檣櫓  灰飛し 煙滅す。
故國に 神遊し,
多情  應(まさ)に 我を笑ふべし,
早(つと)に 華髪を 生ぜしを。
人間(じんかん) 夢の如く,
一尊 還(な)ほ 江月に酹らいせん。

広大な長江の水は東に流れ、波が洗いつくした、
千年もいにしえの風流な(すぐれた)人物たちを、皆。
古びた砦の西のあたり。
人々はここが三国呉の周瑜が魏の曹操を破った赤壁だという。
乱れたつ岩は雲をつき崩すようにそびえ、
激しい大波が岸を裂かんばかりに打ちつけ、
千も重なる雪の花を巻き起こす。
江の水と山の姿は画に描いたよう、
あの当時、一時期になんと多くの英雄豪傑が排出したことか。

はるかに偲ぶ、公瑾(周瑜の字)は当時、
小喬を妻に迎えたばかり、(実際は結婚から十年後に戦い)
雄々しい姿、才気はあふれ、
手に羽の扇、頭に絹の頭巾という平時の(儒将の)装いで、
新妻と談笑する間に、
敵の軍船は焼かれて灰塵は飛び、炎煙に包まれた。
ふるき国に心は遊ぶ。
多情な私をどうか笑ってくれ。
もう早や髪には白いものが混じる年齢だというのに。
人の世はつかの間の夢のようなもの、
ひと樽の酒をまた注いで、江に映る月にささげよう。

 


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